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現実の社会に起きている問題を扱い,感情を引き起こすようなゲームを目指して――「Detroit:Become Human」ディレクター/脚本家デヴィッド・ケイジ氏インタビュー
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印刷2018/04/24 00:00

インタビュー

現実の社会に起きている問題を扱い,感情を引き起こすようなゲームを目指して――「Detroit:Become Human」ディレクター/脚本家デヴィッド・ケイジ氏インタビュー

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは昨日(2018年4月23日),5月25日発売予定のPlayStation 4用ソフト「Detroit: Become Human」(以下,Detroit)のメディアプレゼンテーションを東京・ソニーシティで開催した。開発を手がけたQuantic DreamのCEO/創設者であり,Detroitにはディレクター/脚本家として関わったデヴィッド・ケイジ氏も来日し,15分ほどのインタビューを行うことができた。本稿ではその模様をお届けする。
 なお,記事の後半にはゲーム開始から10チャプターを試遊したうえでの雑感をネタバレを避けながらまとめておいたので,興味のある方にはそちらもご覧いただきたい。

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「Detroit:Become Human」,ゲーム序盤のインプレッションと,ディレクター/脚本家によるQAセッションの模様をレポート

「Detroit: Become Human」公式サイト



「Detroit: Become Human」は,

ゲームを意味深いものにするためのチャレンジ


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 先ほどまで遊ばせていただきましたが,本当に面白いですね。許されるなら,このまま最後まで一気に遊びたいくらいです。

デヴィッド・ケイジ氏:
 ありがとうございます(笑)。

4Gamer:
 もともとDetroitという作品は,技術デモ「KARA」からスタートしたそうですが(関連記事),それを作っている時点ですでに,物語を広げようといった構想があったんですか?

デヴィッド・ケイジ氏:
 それはまったく頭になかったんですよ。「パフォーマンスキャプチャを使って,どれぐらい感情を伝えられるか?」という技術デモとして制作しただけなんです。
 それが非常に大きな反響を呼び,多くの方から「非常に良かった」とおっしゃっていただけましたし,「カーラはあのあと,どうなったのか?」という点が気になったようなんですね。そんな問いに答えたいと思ったことをきっかけに,あの技術デモの世界はどういう設定で,どういうところでアンドロイドは作られているのか……と構想を広げていったのが,Detroitです。


4Gamer:
 では,KARAをDetroitという作品に昇華させるにあたり,主人公を3人にしたのはなぜでしょう?

デヴィッド・ケイジ氏:
 4人だと多すぎて,2人だと少なすぎるからです(笑)。

4Gamer:
 3人がちょうど良い,と(笑)。

デヴィッド・ケイジ氏:
 実は当初,「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」PlayStation 4 / PlayStation 3。以下,HEAVY RAIN)で4人の主人公を登場させていたこともあって,Detroitでも主人公は4人にしようと考えていたんですよ。
 でも脚本を書き始めてすぐ,4人のキャラクターだと多すぎて,描ききれないことに気付いたんです。そこで3人にしたんですが,そのかわり,分岐を非常に多くすることを意識しました。

4Gamer:
 Detroitに限らず,複数の主人公にすることで,プレイヤーの感情移入度が分散してしまうといった危惧はありませんでしたか?

デヴィッド・ケイジ氏:
 複数の主人公が登場するとしてタイトルとして,私達が初めて手がけたのは,2005年に発売した「ファーレンハイト」(北米では「Indigo Prophecy」)なんですが,当時はやはりそういった危惧を抱いていました。ですが結果として,複数の主人公が登場しても,プレイヤーは問題なく感情移入してくれていましたから。

4Gamer:
 そのポイントはどこにあるんでしょう?

デヴィッド・ケイジ氏:
 3人のキャラクターがいれば,その中からお気に入りのキャラクターを見つけやすいというのもあるんですが,シーンごとに視点が変わっていくこと自体を楽しいと感じてもらえると思うんです。
 最近ではTVシリーズでも視点を変えるのが当たり前になっているので,プレイヤーもそういう物語の描き方には慣れてきているのかなと思います。

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カーラ
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コナー
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マーカス

4Gamer:
 それにしても,3人の主人公の物語を描くというのは……頭が混乱してしまいそうです。

デヴィッド・ケイジ氏:
 いやもう,脚本を書くのは悪夢のようなつらさでしたよ(笑)。
 あまりに難しすぎて,「これは書けないな」と思ったこともけっこうあります。最初のうちは快調に書き進められるんですけど,後半に入ってくるとどんどん分岐が多くなっていくので,気が付くと途方もない数の物語を書かなければいけなくなっているんですよね。「これはどうしたらいいんだ?」と途方に暮れた瞬間は,何度もありました。

4Gamer:
 そういった苦労を経て,きっちりまとめきれるのがすごいですよね。
 脚本は,最初から最後までの大まかな流れを決めてから書くんですか?

デヴィッド・ケイジ氏:
 私は普段,脚本を通しで2回書くんです。まずは,どういうストーリーなのかを自分で書き出していきます。そして次に,それを見ながらもう一度書き直すんです。こうすることで,ストーリー側から「ここにあれが必要だよ」みたいなことを教わる瞬間ができるんです。
 また,最初の段階でも自分の中では「こういうストーリーを語りたい」と決めているつもりなんですが,2回目になると「あ,違う。このストーリーは,もっと別の事柄についての話なんだ」と,初めて気付いたりもします。

4Gamer:
 まるで脚本そのものが生きているかのようですね……。
 ところでDetroitは西暦2038年を舞台にしていますが,もし20年後,この作品のような世界が現実となったときに,人間はアンドロイドとどのように接したら良いのでしょうか?

デヴィッド・ケイジ氏:
 非常に面白く,難しい質問ですね。
 その問いに答える前に,アンドロイドや機械が,どの段階をもって人間,もしくは生物と見なされるかという分岐点についても考える必要があります。それによって,答えはきっと変わってきますから。
 そうそう。実はDetroitを書いているとき,自分ではまるでギリシア悲劇のようなものを書いている気がしていました。ギリシア悲劇の世界には悪人らしい悪人は出てこないんですが,登場人物それぞれが異なる目的を持って行動しているがゆえに対立してしまい,それが結果として悲劇に至るんです。Detroitという作品でも,人間は“人間に奉仕する存在”としてアンドロイドを作りました。ところが,アンドロイド側に異なる意識が生まれてしまった。そうなると,人間側が悪い意図を持っていなかったとしても,結局対立してしまうことはあり得ます。

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4Gamer:
 できれば平和でありたいものですが……。
 ところでこの作品では,人間とアンドロイドの共存,あるいは対立といったことが描かれていますが,これは現実社会における人種や属性の違いに起因するさまざまな事象をモチーフにしていると考えても良いのでしょうか?

デヴィッド・ケイジ氏:
 Detroitの中では,人間がアンドロイドを作り,作られたアンドロイドが自分達を新たな種族だと考えるようになったというのが大前提です。自分達が作り出したものが権利を主張し始めたとき,人間はそれを認めることができるのか。認めるのであれば,アンドロイドにも権利を与え,平等に扱わなければいけなくなるが,それができるのか……といった問いかけを,作品を通じてしています。
 直接的にはアンドロイドのことしか描いていませんが,そこから人間のさまざまなグループに対して同じようなことを連想できるかもしれませんね。

4Gamer:
 そういったシリアスなテーマをゲームという形で描こうと思ったのはなぜでしょう?

デヴィッド・ケイジ氏:
 ゲームをもっと,意味の深いものにできないものか? という思いがあってのことです。
 HEAVY RAINや「BEYOND: Two Souls」PlayStation 4 / PlayStation 3)といった過去の作品では,個人の中に芽生えた非常に濃密な感情を描いてきましたが,今回はそれをより広げて,現実の社会に起きている問題を扱って感情を引き起こすようなゲームを作ることにチャレンジしてみたかったんです。

4Gamer:
 そのチャレンジがプレイヤーからどのように受け止められるか,非常に楽しみですね。
 短い時間でしたが,ありがとうございました。


試遊した記憶を捨てて

まっさらな状態で最初から遊びたい……


 最後に,ゲーム開始から10チャプターを試遊したうえでの雑感を,ネタバレを極力避けた形でまとめておきたい。ネタバレを含むインプレッションについては,別記事を用意しているので,そちらをご確認いただきたい。

 まず,筆者自身がDetroitに対して,人間やアンドロイドが登場する近未来を舞台としたSFっぽいアドベンチャーゲームだという先入観を抱いていたことを告白しておきたい。これも決して間違いではないと思うのだが,実際にプレイして気付いたのは,Detroitはあくまでも人間が暮らす社会を描いた物語であるということ。
 プレイヤーはチャプターごとに,カーラ,コナー,マーカスといった3体の……いや3人のアンドロイドを操作し,自身を取り巻く環境や社会とさまざまな形で関わっていくことになるのだが,アンドロイドを操作しているというより,ほかのどんなゲームよりも人間のキャラクターを操作しているような感覚を味わえた。
 当初はアンドロイドとして人間に奉仕すべく動いているはずが,その過程でプレイヤーの感情を刺激する出来事がちょくちょく発生する。やがて,主人公達とプレイヤーの感情が同調し始め,アンドロイドを忌み嫌う人々からのシュプレヒコールを聞けば苦しくなるし,人間と同じように扱ってくれる人の言葉には胸が熱くなる。だからこそ,次にどんな物語が待ち構えているのかが楽しみで仕方なくなる。Detroitは,そんな作品だ。

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 ただ,次にどんな物語が待ち構えているのかが,プレイヤーごとに異なるものになりやすいのも,本作の大きな特徴だ。インタビュー中でも軽く分岐の多さについて語ってもらったが,この分岐というのが,どの選択肢を選んだかによって決まるという程度の単純なものではなく,どこで何をどの程度までやったかによって,選択肢そのものが変わっていく。結果,プレイヤー一人一人がときには違う物語に直面することになる。
 実際,ほかのメディアが試遊している様子をチラ見すると,同じシーンの結末がびっくりするぐらいに違っていた。途中で何かのアイテムを手にするかどうか(しなくても物語は進む)によって,次のチャプターでとれる行動にも変化が生じ,その行動がほかの登場人物に影響を与えたりもするのだ。しかも,かなりダイナミックに。

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 率直に言って,Detroitはかなり面白い。記事を載せておきながらこういうことを言うのも我ながらどうかと思うが,Detroitを購入してプレイすることを心に決めている人に,あらゆる事前情報をシャットアウトし,まっさらな状態で向かい合ったほうが良いとすら思う。
 筆者としても,できれば途中までプレイした記憶をいったん消去したうえで発売日を迎えられないものかと,かなり本気で思っている。製品版をプレイするときに試遊の記憶に引きずられて“より良いであろう選択”をしてしまったら,試遊で見た物語の続きには到達しなさそうだし,なるべく試遊と同じルートをたどろうとしても,きっとどこかで見落としだったり,やり過ぎだったりがあって,やっぱり試遊の続きにたどり着かない気がするのだ。ともあれ,発売が心底楽しみである。

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「Detroit:Become Human」,ゲーム序盤のインプレッションと,ディレクター/脚本家によるQAセッションの模様をレポート

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