関東に3店舗を構える不動産サービス「
おたくのやどかり」が,スマートフォン向け新作ゲームとして
「異世界ミニマムクラッシュ」(
iOS /
Android)を2020年10月21日にリリースするという。
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「おたくのやどかり」を展開するグランツアセットは,過去に
インタビューを通じてお伝えしたとおり,端的に言えば「ゲーマーに向いた部屋」を探してくれる不動産屋だ。
そもそも不動産屋がなぜスマホ向けに新作ゲームを作るのかは単純に疑問だが,業務の一環として詳細を調べてみると,本作のプロデューサーはYouTuberの
鈴木ゆゆうた氏で,開発会社は(あの名物プロデューサーの)
中尾圭吾氏の率いるエスパーダ,そしてグランツアセットのCEO
平田知彬氏が資金提供&事業PMの立場にあるという,画期的なのか,大丈夫なのかが絶妙なバランスでせめぎ合っているプロジェクトだった。
正直これは直接お話を聞いてみないとよく分からないという考えに至り,気がつけばトントン拍子にセッティングが進んで実現していたのが今回のインタビューである。
左から,こーすけ氏(インタビュアー),平田知彬氏,鈴木ゆゆうた氏,中尾圭吾氏
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彼らはどんなコンセプトを掲げ,群雄割拠のスマホゲーム市場に一本の新作アプリをリリースしようとしているのか。ここまで読んだらもう諦めて最後まで目をとおしてほしい。
衝突を繰り返し,ついに生まれた新作アプリ
もこうさん,やしろあずきさんの特別コメントも
こーすけ氏:
さて,僕らがかしこまって話すのはなんか変な感じもしますが……。初見の読者さんもいると思いますので,まずは3人の自己紹介から聞いてみようかな。
鈴木ゆゆうた氏(以下,ゆゆうた氏):
はい,鈴木ゆゆうたです。YouTuberとして動画投稿やらなんやら,やらせていただいております。「異世界ミニマムクラッシュ」では,企画立案者でありプロデューサーです。
平田知彬氏(以下,平田氏):
「おたくのやどかり」(以下,おたやど)というオタク社員しか存在しない不動産会社の代表をしております,平田です。今回は出資者,プロジェクトマネージャーという形で関わらせていただいています。不動産については,こーすけさんにもご利用いただきました。
こーすけ氏:
おたやどができた直後くらいに物件を紹介してもらったんですよね。今でもそこに住んでますよ!
ゆゆうた氏:
ああ,そこは関わりあったんだね。
こーすけ氏:
中尾さんは初めてお会いします。せっかくなので,経歴を含めていろいろ教えてください。
中尾圭吾氏(以下,中尾氏):
はい,私はエスパーダで代表取締役をしています。弊社の特徴は日本では珍しく,海外の会社で開発をやってきたという点です。主な実績は御誌はよくご存知だと思うので割愛させてもらいます。
海外の大きめのタイトルに関わることが多かったので,近年もやはり10億円以上の規模のタイトルに携わるのがメイン事業です。しかし今回はちょっと弊社の色とは異なる珍しい形での参戦となりますね……!
ちなみに,御社もご存じのとおり独立後にインディーズで最速リリースをテーマにして,東京ゲームショウに出したのが1つありましたよね。すみません,評判は上々でしたが,結局いつもどおり品質を上げたいということで,あと1年〜2年は開発に時間がかかりそうです……。
4Gamerさんはわりと長い付き合いなので,このあたりはよくご存知だと思います(笑)。
中尾氏は「ラグナロクオンライン」の産みの親が作ったMMORPG「グラナド・エスパダ」の共同開発と日本運営の責任者を総括。「Diablo II」を作ったBill Roperの「HELLGATE」の再開発にて運営と開発の責任者を総括した経験がある。
こーすけ氏:
海外と国内がしっかりと連携していると,いわゆるヒドいローカライズが減りそうでいいですね。それ以外に何か携わった作品はあります?
こーすけ氏:
そんな人がこのゲームに関わっているって,ちょっとビックリだなぁ。ある意味では新しい挑戦ってことなのかもしれませんね。
中尾氏:
前職の上司はeスポーツ文化を創り上げた人でもあるので,そういったチャレンジャーな企業にいた関係で,僕自身も新しいものが好きなんですよ!
今回の“YouTuberがゲームを作る”というコンセプトは「本当に成立できるのか?」ってかなり興味を惹かれまして。
こーすけ氏:
なるほど。あらためてプロデューサーのゆゆうたさんにお聞きしたいんですが,この成立するのか分からない謎のゲームを,どうして作ることになったんですか。
ゆゆうた氏:
僕らは動画投稿とかが仕事なんですけど,それにあたって新しい展開を求めていた部分があって,みんなに注目されるような“何か”を探していたんですよ。そこで思いついたのが「ゲームを作る」だったんです。
こーすけ氏:
ほうほう。
ゆゆうた氏:
YouTuberとゲームの関係って,先にゲームがあって,タイアップとしてYouTuberが出てくる形が一般的で,発信者側がゼロから作るってスタイルの作品は今までなかった。でも僕にはゲームの知識とかがなかったので,いろんな人に「こんなものを作りたいんです」って相談してみたんです。それに応じてくれたのが,今のメンバーって感じですね。
こーすけ氏:
とくに前から仲が良かったとかじゃなくて,たまたま利害が一致した人が集まったと。それぞれ活躍してる分野も違う人達ですし,実行に至るまでは大変だったんじゃないですか?
ゆゆうた氏:
「ゲーム作りてぇ」と本当にそれだけで突き進んでいったので,今はもう毎日衝突してますよ。「これやりたいっす」「できねえよそんなの」の応酬です。
平田氏:
はじめに話を受けたのは自分で,当初は盛り上がって「やろうやろう」となったんですが,実行の段階になるといろいろすり合わせが大変で……。
中尾氏:
だって「キャラクターはオール実写」「会話は実写ムービー」とか言うんですよ!
こーすけ氏:
あ,あまりに挑戦的すぎる。
ゆゆうた氏:
言った瞬間,吸ってるタバコ擦りつけられるかと思いましたよ。
こーすけ氏:
明らかにヤバい雰囲気だなぁ。率直な疑問なんですけど,そんな状態のゆゆうたさんが相談に来たとき,平田さんはなんで受けたんですか。
平田氏:
プロジェクト自体に魅力を感じたのはもちろんなんですが,僕が個人的にゲーム関連の商売に関わってみたいと思っていた頃だったんです。先ほどお話したように,本業は不動産なのですが,僕自身が格闘ゲームやデジタルTCGの大会に出場してたゴリゴリのゲーマーなので,仕事でゲームを作ってみたかったんですよ。
とはいえゲームの開発能力はなかったので,社内で詳しい人間がいないか探してみたら,過去にゲーム開発やプロモーションを担当していた人間がいまして。そこから中尾さんをご紹介いただき,現在の座組に落ち着きました。
こーすけ氏:
なるほど。おたやどの“社員全員オタク”ってコンセプトが役に立ったわけですね。
ゆゆうた氏:
本当に仲間に恵まれました。さっきも言ったけど,トントン拍子ってワケにはいきませんでしたけどね。
こーすけ氏:
いろいろな条件が揃った結果,今のメンツが揃ったと。それでこのゲームはいつから作っていたんですか?
平田氏:
いつ頃だったかなぁ。計画が立ち上がったのは去年の夏頃ですよね。
ゆゆうた氏:
そ,そんな前でしたっけ……。パッと思いついてから嵐のように時間が過ぎていったので,なんか最近のことのように感じますね。月日が経つのは早いなぁ。
こーすけ氏:
1年っていうと長く感じますけど,1つのゲームをゼロから開発すると考えるとけっこう早くないですか。事前に遊ばせてもらった感覚では完成に近いようにも見えましたし,具体的にはどうやってゲームを作っていったんです?
ゆゆうた氏:
おれもちょっとビックリしたんですよ。1年でできるものなんだなって。
中尾氏:
企画が立ち上がったのは夏なので,開発自体は秋頃から始まってます。なので実質的な開発期間は1年未満ですね。
こーすけ氏:
すげー。
中尾氏:
本当に地獄でしたよ。期間が短いから夜中に突然連絡がきてやり取りをすることも多くて,根本的なバトルシステムも側替えではなく1から作っているので,クラッシュ&ビルドを繰り返して組み上げていきましたから。
ゆゆうた氏:
間違いなくエスパーダの社員さんは全員僕の悪口言ってますよ。
中尾氏:
ウチはもう「平田」と「ゆゆうた」って名前の社員は採用しません。ヒドい目に遭った社員が発狂しちゃうから(笑)。
こーすけ氏:
それでも完成近くまで持っていったわけですから,開発力の高さが証明されましたよね。さまざまな事情があるなか,どんな気持ちでゲームを作っていたんですか?
中尾氏:
私としては,このプロジェクトを通じてゲームの間口が広がると良いなという思いが,一番強くありました。ゲーム業界の中では既存のゲームに縛られてしまって,常識にとらわれて似たようなゲームしか生まれなくなってしまうんです。
もはや日用品になったスマホには,1つくらいわけが分からんアプリも入ってて良いと思っていて。
ゲーマーが求めているものを探し当てようとがんばっても,最終的には「何が当たるか分からない」という部分に着地することになってしまう。であれば,こういった異なるアプローチも意味があるものになるんじゃないか,というのが僕の考え方です。
こーすけ氏:
あー,それはあります。新作がリリースされて遊んでみても,いろいろなゲームを遊んでいる人だと「ああ,あの系譜ね」って分かっちゃうんですよね。
中尾氏:
いろいろな企業のコンサルをしたり,共同開発をやったりしているんですが,どうしても同じ業界だと発想も近くなってしまう。しかし,ゆゆうたさんの見た目はともかく天才なので,違う発想をくれるんですね。
ゆゆうた氏:
……ん?
平田氏:
そうですね。実際に見た目はともかく天才だと思います。
ゆゆうた氏:
あれ,いま褒められてるの? バカにされてるの?
こーすけ氏:
天才と言えばですが,本作にはもこうさん,やしろあずきさんも重要なメンバーとして制作に携わっているんですよね。せっかくなので,この場にいない皆さんが関わることになったきっかけの部分も聞かせてください。
平田氏:
もこうさん,やしろあずきさんは,おたやどのアンバサダー的な立場として関わっていただいていて,前提として関係値が高かったというのが大きいですね。2人ともゲームに関する造詣が深いので,心強い限りです。
こーすけ氏:
なるほど,関わりの深いインフルエンサーの中からゲームに強い人を選び抜いた感じですね。
平田氏:
とくに,もこうさんは企業案件を受ける場合でも自分が宣伝したくないものは絶対にしないし,歯に衣着せぬ感想を言う人なんですね。ゲームに関しては妥協しないもこうさんが開発に関わっているというのは,ぜひアピールしたいポイントです。
ゆゆうた氏:
本当にもこうさんは企業案件でも絶対に妥協しないからなぁ。
平田氏:
あと,やしろあずきさんは元々ゲーム会社に務めていて,かなりゲームの知識があるんです。多くのイラストを描き下ろしていただいているだけでなく,しっかりとゲームに合った素材を提供してくださっています。そちらも注目してみてください。
ゲームには3人がベースとなる多種多様なキャラクターが登場する
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もこうさん,やしろあずきさん特別コメント
本作の制作に携わった“3人のインフルエンサー”に名を連ねるもこうさん,やしろあずきさんは残念ながらインタビューには同席できなかったが,4Gamer読者向けのコメントを後日受け取れたので,こちらで紹介しよう。
【もこうさん】
本格的なゲーム性、多彩なキャラクター。
豪華ボイス、BGM。
これはもう、ネタゲーではない!
一度手に取ってその目で見てほしい。
真のアプリゲーというものを。
■もこうさん YouTuber
チャンネル登録者数 107万人(※2020年8月7日時点)
https://www.youtube.com/user/mokoustream
【やしろあずきさん】
自分のキャラは声までも自分で全て吹き込んだのであんまり自分ではやりたくないんですが、漫画を読んでくださってる方には楽しめるような演出も多いと思いますので、是非楽しんでプレイしてみてください!
課金したら家にコーンが届く要素とかは多分ないです。
■やしろあずきさん Web漫画家
月間PV:昨年10月に2000万PVを突破
http://yashiroazuki.blog.jp/
インフルエンサーはあくまで“きっかけ”
ライトとコアのどちらも楽しめるゲームを目指す
こーすけ氏:
3人のインフルエンサーが集まってゲームを作るなんて,今までになかったことじゃないですか。そんな中で「ここだけは普通のゲームとは違う」と,自信をもって言えるポイントを聞かせてください。
中尾氏:
普通のプロジェクトと一番違うのは,ゆゆうたさんの思いつきですべてが動くことですね。その根本的な発想がメチャクチャなので,それを調整していったら必然的に変なものになるというか,既存のものとはまったく異なるものになるわけです。良くも悪くも,ゲーム業界の常識にまったく縛られていないので,とにもかくにも違うものにはなる。
ゆゆうた氏:
アインシュタインの発想ってやつですよ(キリッ)。
中尾氏:
ムカつく(笑)。
平田氏:
それはハードル上げすぎ!
ゆゆうた氏:
話を戻すと,推したいポイントは「ボスキャラを俺ら(インフルエンサー)が操って戦う」って要素です。なんとか実現できたので,これはぜひ注目してほしい!
こーすけ氏:
え,それってリアルタイムにゆゆうたさん達がボスを操作するってことですか?
中尾氏:
これですよ。こうやって,今までのゲーム業界にはない発想がポンポン飛び出してくる。これが面白いんです。
平田氏:
ただ,ボス側を操作制御しつつ戦うレイドバトル的なコンテンツって,作るのは相当大変なんですよね。予算にも期間にも上限があるなか,それを完成させられるのかというと……。
ゆゆうた氏:
俺の軽はずみに放った一言で,エスパーダの社員さんに苦労させました。それは否めない!
こーすけ氏:
それでも面白いのは間違いないですよね。実際に作るとなったら「これもやりたい,あれもやりたい」ってなるだろうし。
ゆゆうた氏:
僕が操作してる様子を配信するのも面白いじゃないですか。「このプレイヤーA,倒しちゃおっかな!(ポチッ)」みたいな。こういう僕らだからこそできるってことをやりたかった。そこで僕らがプレイヤーに対してセリフを発したり,コミュニケーションを取ったりする仕組みが……。
平田氏:
まだそんな仕様ないから!
中尾氏:
ないものを勝手にしゃべらないでください。作らなきゃいけなくなるでしょ!
ゆゆうた氏:
……もしかしたら実現するかもしれません。
こーすけ氏:
さっきチラッと言ってましたけど,会話パートや必殺技ムービーは実写なんですよね。今はキャラクターがアニメーションで動いていますが,もともとは全部実写になる予定だったんですか?
ゆゆうた氏:
そうです。ギリ妥協です。
中尾氏:
いやいや,もうこれ以上はアプリサイズ的に相当厳しいんですってば。必殺ムービーが実写かつ,1つのキャラクターに数十枚の絵を使ってアニメーションさせている関係で,それだけでサイズがすでにだいぶデカイんです!
スキルを発動すると実写ムービーが挿入される。音ゲー感覚でタイミングよくタップすると,スキルの効果を上昇させるられる
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平田氏:
このように,我々は開発側の事情を知るわけがないので無茶を言って,最終的にエスパーダの社員さんがハゲると。
中尾氏:
どこまでを実写にするかにもよりますが,シナリオでもフル実写ムービーなんてやると10GBも有り得ますね……。実写映像の会話パートは顔芸写真を取り込んで使ったり,妥協案として必殺ムービーに実写を入れたり,提案を取り入れた対案を出しつつ,同意を得て現在の形に落ち着いた感じです。
ゆゆうた氏:
まぁ妥協とは言いましたけど,でき上がったものを見るとアニメーションもめっちゃヌルヌル動いてて。今の形も良いと思ってますよ。
中尾氏:
もともと動画でやりたかったわけですから,全否定せずに発想の部分はちゃんと拾っておきたかったんです。参加されているインフルエンサーの皆さんの芸風もギャグ寄りの部分が強いので,綺麗な1枚絵を使っても何も面白くない。じゃあ動くイラストでやろう,という流れで現在の形になったんです。普通のゲーム開発ではあり得ない作り方ですよね。なので絵自体はやしろさんのテイストに合わせてネタ系(?)なんですが,1枚の止め絵じゃなく,1キャラに20枚とか使っているんでわりとコスト高いっす。
こーすけ氏:
僕もいろいろなゲームを遊ばせてもらっていますし,開発者さんのインタビューも読んでいますが,そんな作り方は1回も聞いたことがないですよ。インフルエンサーさんとバチバチにやりあって作る,なんてのは。
ゆゆうた氏:
いやーそんなつもりはなかったんですが。
中尾氏:
振り回されっぱなしでしたよ!
平田氏:
当初計画していたものより,だいぶ違うものになりましたが……。それでもいただいた要望は可能な形で実現していると思います。
中尾氏:
実写ではなくなりましたけど,ボスキャラのデザインとかはファンの方が楽しみやすいデザインを採用してますからね。そのあたりもいろいろと楽しんでみてください。
こーすけ氏:
っていうと,どんなデザインなんですか?
中尾氏:
主役がインフルエンサーなので,ボスキャラのデザインはネット上のアンチや,SNSで炎上が巻き起こりやすい時事ネタをモチーフにしてるんですよ。「メンヘラちゃん」とか「マウントくん」とか「ネット弁慶」とか。
時事ネタなどをモチーフにしたボス例。左がマウントくん,右がメンヘラちゃん
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かなりキワどいネタでは「爆破予告マン」ってのが出るんですが,こいつはデザインモチーフがカワウソなんですよ。なぜなら嘘つきで,どんどん嘘が巨大化していくから(笑)。
こーすけ氏:
あーいるいる! デザインもしっかりと元ネタを反映してて,いい意味で皮肉が効いていますね。
ゆゆうた氏:
あと,突飛なだけじゃなくて,ゲームとして十分楽しめるものになっているって部分は絶対にアピールしときたい。「適当にインフルエンサーを寄せ集めて作ったんだろ?」と思われるのは,やっぱり嫌じゃないですか。
こーすけ氏:
あ,それ思いました。僕も遊ばせてもらったけど,実際にやってみると奥深い部分があるんですよね。最初に触れた瞬間はいわゆるファンゲームかなと思ってたんですけど,しっかり戦略を考える余地がある。
平田氏:
この3人の中に共通してあったのは「インフルエンサーさんのファンに頼りたくない」という意識でした。前提としてファンの皆さんに喜んでいただくのはもちろん,そうでない方にも楽しんでもらいたい。そのためには,しっかりと面白いものを作る必要があったんです。
構想を固める段階では,ゲーマー向け過ぎたり,逆にカジュアル過ぎる部分を丸めるために右往左往したりする形になりましたけどね。最終的には,初心者への間口は十分に広く,上級者でもやり込めて,ファン以外の方でも楽しめるというラインに落ち着いたのかなと思っています。
ゆゆうた氏:
インフルエンサーは遊ぶためのきっかけだけでいい。あとはハマってくれ,と。
中尾氏:
これはゆゆうたさんが言ってたことなんですが,皆さんは“動画を作る人”ではなくて“コンテンツを作る人”なんです。だから,ゲームも作りたくなった。そんな人達からどんなゲームが飛び出してくるのかを,ぜひ楽しみにしていただければと。
今現在3人のファンになっている人も,最初は全員が知らない人だったはずです。その入口にゲームが追加されることで生まれる相乗効果に期待しています。
こーすけ氏:
新しい発想をインフルエンサーから取り入れて,それを平田さんのような理解ある出資者さんが受け止めて,経験豊富な作り手がゲームを作っていったと。だからこそ,カジュアルとコアな遊び方を両立できたのかもしれません。
僕もまだ10分くらいしか触れていませんが,やっぱ単純な操作が良いんですよね。基本的には片手間で遊べる手軽さを維持しつつ,ボス戦ではしっかりと取り組む必要があるような。キチンとしたバランスが取れてるように感じました。
中尾氏:
新しい1つの流れを作れるかもしれないですよね。この形式が定着すれば開発費の高騰も避けられるかもしれません。開発費が高い反面で客単価もどうしても高くなっている傾向がありますし,このプロジェクトは原価が安いので,ランキング入りを目指す必要もないです。ファンの方にも安めの単価で提供できるのが良いところだと思います。そういった意味でも別の角度でユーザーの裾野を広げられるかもしれない。
平田氏:
あ,この客単価を下げるっていうのは,こだわっているポイントの1つで,通常のゲームに比べると課金要素が相当に緩いんですよ。比較的容易に好きなキャラクターを入手できる仕組みになってます。
ゆゆうた氏:
すぐ,本当にすぐ出ます。出させました。
平田氏:
最初にゆゆうたさんは「これはもう無課金のゲームにしよう」と話していたんです。なんだったら「お金は募金にしよう!」とか言い始めて……。
中尾氏:
ここ(自身と平田氏を指しながら)からすると,ゆゆうたさんに任せるとどんどん資金が回収できなくなっていくわけです。資金2500万円がパーになってしまう。
平田氏:
ゲーム業界の最近の水準である何億が当たり前みたいな数字が出たあとだと霞んで見えますけど,私にとってはなけなしの2500万ですからね。絶対に成功してもらいますよ!
ゆゆうた氏:
いやいや,お金でファンが好きなように楽しめないゲームになっちゃったら「なんたることか」って感じになるじゃないですか。
中尾氏:
万事こんな調子なので,マネタイズに関しては完全にゆゆうたさんをハブって考えました。さすがに平田さんが可哀そうだったので……!
平田氏:
ただ,しっかりと意向は汲んでいますよ。一般的なガチャよりも単価を落として,確率もかなり大きく上げています。また,通常のステージを周回する中でガチャチケットが出る場面もあるので,無課金でも全然ガチャを引けますよ。
ゆゆうた氏:
どう考えても課金しないと倒せないボスとか,たまに出るじゃないですか。それはもう絶対にダメで,やり込みたい人だけが課金する方向に持っていきたい。
こーすけ氏:
僕も少ししか遊んでないのに報酬としてガチャチケットは出てましたし,本当に無課金に優しそうですよね。ライトユーザーさんの中にも,最終的に一番強いゆゆうたさんのキャラを作りたい人もいると思うので,そこに到達できるように作っているのは良いと思います。
平田氏:
時間のない方は課金するなど,あくまで時短の選択肢の1つとしてマネタイズを用意しているイメージです。
こーすけ氏:
そもそもゲームシステムはどうやって考えたのか気になるなぁ。ゆゆうたさんはこのゲームを「ジャンケンとバケツリレー」って説明してましたが,その発想の根本はどこから?
ゆゆうた氏:
僕自身があんまりゲームを遊ばないので,難しい操作なしでもハマっちゃうようなゲームを作りたいと思っていたんです。そんな感じのコンセプトを伝えて,システムは相談しながら組んでいきました。
平田氏:
いわゆる火,木,水みたいな属性で3すくみを使っても良かったんですけどね。何よりも分かりやすさを優先するならグー,チョキ,パーだろうという話になったんです。
ゆゆうた氏:
ジャンケンやったことないやつはおらんやろと(笑)。
中尾氏:
それだけじゃゲームが成立しないから,控えキャラクターを交換しながら戦うバケツリレー要素を追加しました。
平田氏:
相手に対応するグー,チョキ,パーを出すだけのゲームはさすがに薄味すぎるので,あいこに特別なリターンを与えて意思決定の余地を加えたんです。
こーすけ氏:
そうでしたね。あいこのキャラクターを用意しておくとダメージが25%カットされるから,敵の攻撃を耐えながらスキルをチャージするとか,有利相性は与えるダメージと一緒に受けるダメージも増えるから勝てる場面でも別の選択を取る理由があるとか。短い時間でも,いろいろな発見があって楽しかったです。
平田氏:
ゲーム序盤は単純に勝つキャラクターを出すだけでいいんですが,中盤くらいになると「なんで有利な手を出してるのに勝てないんだ?」となってくるので,そこからいろいろと考えられるようになっています。
じゃんけん勝利時やあいこ時などの状況に応じてダメージ倍率が変化する。臨機応変に対応することが勝利のカギだという
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中尾氏:
あとは,ぜひパッシブ能力の編集を楽しんでほしいなと思います。パッシブ能力は「HPが減っているときに」や「自分のレベルが負けているとき」といった特定の状況をトリガーにして発動するので,パッシブ能力に合わせた動きを考えると有利に戦えるんですよ。珍しいものでは「倍速モードをオンにすると発動」というトリガーもあって,よりスキルの扱いを磨きたい人も楽しめますよ。
こーすけ氏:
お,これうまく組み合わせれば面白いことができそうですね。こういうのゲーマーは大好きですよ。
パッシブにはいろいろな種類があり,プレイヤー次第でビルドは変わってくる。振ったポイントはリセットして振り直せるため,ボス戦で苦戦した場合は火力に振り切ったものに変えるといったことも可能だ
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中尾氏:
そういったやり込み要素を生かすコンテンツとして,5フェイズの戦闘で1フロアが構成された「無限ダンジョン」も用意しています。1戦に10分ほどかかる半エンドコンテンツで,出現するボスキャラはブラック企業軍団!
初期リリース時にはまだ入っていないかもですが。
平田氏:
某班長みたいなのが出てきます。
こーすけ氏:
おお,こりゃいいですね。ゲーマーはそういうネタを探すのが好きだから,どんどん先に進んで「こんなやつが出たぜ」って共有してくれますよ。
ゆゆうた氏:
実際にやってもらえば分かると思いますよ。単にインフルエンサー集めて作ったゲームじゃないってことがね。
平田氏:
良いセリフいただきました!
こーすけ氏:
あ,そうそう。ゆゆうたさんと言えば音楽ですが,そのあたりについてはどうでしょう。
ゆゆうた氏:
全部僕です。音楽だけじゃなくて,キャラクターのデザインも僕がラフを書いてアップしてますよ。
こーすけ氏:
すごいことじゃないですか。単に発案として口出してるだけじゃなくて,しっかりとクリエイターとして関わっているってことですもんね。
ゆゆうた氏:
ぜひ一番気合を入れて描いたSSRキャラクターの原画を見てくださいよ。目からして嫌だもんこれ。
平田氏:
うーん具合悪そう。
ゆゆうた氏:
というわけで,これはボツにしました。
中尾氏:
育毛剤の宣伝がきたという話を聞いた現場のスタッフが,取り入れなきゃと作ったイラストでした。しかし完全に現場の余計な仕事に……。
ゆゆうた氏:
俺の悩んでる部分を全部詰め込んでる……。
平田氏:
せっかくなんで,1枚だけ頭頂部から撮影した写真使いましょうよ。
ゆゆうた氏:
やだー!
こーすけ氏:
男が一番気にするであろう部分をグイグイ突いていきますね。
中尾氏:
なーんも言わずにしれっと「新キャラです」って提出しましたからね。あわよくばとおらないかと思って。
ゆゆうた氏:
すみません,3人共仲悪いんです。あ,絵は全力で命をかけてボツにしました。
こーすけ氏:
ゆゆうたさん,ちょっとこれ見てもらっていいですか?
(ゆゆうた氏の背後,主に頭頂部に忍び寄るカメラマン)
ゆゆうた氏:
おいやめろ撮るな! おいカメラを止めろ!!
平田氏:
撮影といえば,表情を撮るときもなかなか苦戦しましたよね。僕は撮影にも同行したんですが,表情1つとっても大中小に分けて撮る必要がありまして。しかし,ゆゆうたさんはなかなか表情に変化がつかなくて,何度も撮り直しましたよ。
ゆゆうた氏:
「あ,その表情はさっきのと同じっすね」とかいって,何度も撮ったんですよ。でも実際,24種類も表情を作れます?
平田氏:
ほかの方はわりと表情豊かだったんですが,ゆゆうたさんは手間取りましたね。
ゆゆうた氏:
苦労したの俺だけだったの!?
実際のストーリーでは,3人の顔芸と共に話が進んでいく。ネタとなった話なども多く盛り込まれているという
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「このゲームに出たい人選手権」開催決定?
有名YouTuberとのコラボも実現するかも
こーすけ氏:
ちょっと先の話になっちゃうんですけど,今後やってみたいイベントとか。この3人だからこそできるような,新しい取り組みは考えていたりしますか?
ゆゆうた氏:
まだ具体的に決まったことじゃないんですけど,いろいろなYouTuberさんや動画投稿者さんも巻き込んでいきたい。
こーすけ氏:
お,なんだったら僕も大中小の表情24種類撮りますよ?
ゆゆうた氏:
俺よりうまいかも(笑)。
こーすけ氏:
でも確かにそういったイベントもできますよね。思いつきで喋りますけど,例えば「このゲームに出たい人選手権」ってイベントをやって,選出したYouTuberの中からボスバトルでより高いスコアを取った人が出るとか……。
平田氏:
それ,採用!
こーすけ氏:
採用!?
中尾氏:
うん,そうなんです。本当にこのノリで作ってるんですよ。
ゆゆうた氏:
一本取られましたね。これ(プロデューサー職)あげますよ。おめでとうございます。
こーすけ氏:
ついに俺も開発側に! ……ってのは冗談として,この作り方をしていれば普通のゲームではあり得ない発想のイベントもできそうですね。そのほかに実装したい機能とかはありますか?
平田氏:
僕はゲーマーなので対戦機能がほしいんですよね。
中尾氏:
自分はもうYou Can Flyって叫びながら従うばかりです。
ゆゆうた氏:
何を言っても「できる」って言ってくれるんで,こっちも思いついたことを言っちゃうんですよね。
中尾氏:
「できない」と言うと,そこで発想が終わってしまうので。まずは部分的にでも発想の中からできる部分を探して,提示して,実装していく必要があるんです。
平田氏:
このゲームの仕様に合わせた新機軸の対戦機能はほしいですよね(チラッ)。
ゆゆうた氏:
できればいいですよねぇ(チラッ)。
中尾氏:
常にこの調子なので大変ではありますが……。
こーすけ氏:
まだゲームもリリースされていないのに新要素の話をしちゃってるのは,なんだか新鮮ですね。プレイしてる側としては正直嬉しいですよ。新しい遊びを常に期待できるってことですから。
中尾氏:
業界人はこの流れを見てマジかよって思うかもですが,このノリで新しい仕様が決まったときに言う社内テンプレートは,「YouTuberには新しい常識がある。こうやって自分たちがとらわれてきた価値観を壊していこう」と話しています。だから絶対にキレちゃだめだよって。
こーすけ氏:
して,その実態は。
中尾氏:
最初にキレたのは自分でした。
ゆゆうた氏:
俺,会ったこともないエスパーダの社員さんに急に刺されるかもしれない……。
こーすけ氏:
じゃあそのイベントもやってくださいよ。ゆゆうたに無茶振りされてきた開発者がゆゆうたに復讐するイベント!
中尾氏:
その発想は内部的にもあって,嫌がらせで平田さんをモチーフにしたキャラクターを作っています(資料を取り出す)。現在では普通にゲーム内に平田さんが出てますよ!
平田氏:
別に僕が出たいとか言ったわけじゃなくて,気づいたら「駄女神の平田,だらしないチュートリアルを担当する者」が実装されてたんですよ。そして,やたらと顔色が悪い。
ゆゆうた氏:
こんなのがチュートリアルで出てきたら腹立つわ(笑)。
こーすけ氏:
いったん話を戻して,先ほど少しだけお話が出たコラボについて深く聞きたいと思います。言える範囲で構わないんですが「こういうコラボをやってみたい」とか,将来的に出てほしい人だとか,そういった構想があれば教えてください。
中尾氏:
そうなると,やっぱりゆゆうたさんとつながりのある方が良いんじゃないですかね。
ゆゆうた氏:
ヒッカキンTV〜♪ 加藤純一さんとか!
平田氏:
ヒカキンさんは……さすがに難しいと思うんですが! 並び的には加藤純一さんはもこうさんと絡みがあるので,良いんじゃないかなと思っています。
こーすけ氏:
個人的にはヒカキンさんも全然アリだと思うんですが,最初に出ちゃうとあとの人のハードルがめっちゃ上がっちゃいますよね。
ゆゆうた氏:
だから最終目標ってことで1つ。
こーすけ氏:
今の話を聞いていると,芸能人の方でも「やりたい」って言う人は多いんじゃないですかね。例えば宮迫さん,YouTubeって場所に来てくれているじゃないですか。YouTubeで動画を投稿されている方は芸能人であっても横並びの存在だと思うので。
ゆゆうた氏:
宮迫さん,良いかもです! 失礼な意味ではないっすけど,クセが強い人のほうが合ってる気がするんで。清廉潔白すぎる感じじゃないほうが。
こーすけ氏:
ヒカキンさんじゃなくてデカキンさんのほうがいいみたいな。
ゆゆうた氏:
これ記事にしたらコラボのオファーかけられた相手が「俺,クセが強いの?」って邪推されちゃうじゃん。
一同:
(爆笑)
こーすけ氏:
クセ云々は置いといて,そういうコラボがあったらファンは嬉しいですよね。ゲームをとおしてコラボをする機会なんて,なかなかないと思うので。
ゆゆうた氏:
そうですね。
こーすけ氏:
本当に聞きたいことだらけではあるんですが,このままじゃ永久にしゃべっちゃいそうなので……。最後にインタビューの締めとして,これからゲームをプレイする皆さんに向けたメッセージがあれば聞かせてください。
ゆゆうた氏:
遊んでみれば絶対に面白いので,いわゆる「騙されたと思って」という話じゃないんですが,とりあえず遊んでみてください。広告もどんどんやります。4Gamerさん,トップの背景にドカンと広告やってください。
平田氏:
あれけっこう高いですよ。もうちょっと考えてからしゃべってくださいよ。これ,4Gamerさんのインタビューなんですよ?
こーすけ氏:
じゃあ見積もりを送るように言っとくので。
(編注:送ります)
平田氏:
ほら,こういうことになるから!
こーすけ氏:
それは冗談なんですけど,広告だけじゃなくてファン同士のクチコミで評判が広がっていったら理想的ですよね。
ゆゆうた氏:
バズりそうな面白い要素も用意してるので,スクリーンショットを撮ってどんどんアップしてください。ゲームは絶対に面白いので,どこから興味を持ってくれても問題ないです。
スクショを上げてくれたら,探してリツイートして回りますよ。このゲームはある意味で「僕らみたいな連中でどこまでやれるのか」っていう挑戦でもあるので,ぜひ協力してください。
こーすけ氏:
動画投稿を待つ視聴者みたいな気持ちじゃないですけど,本当に今後の展開も楽しみですよ。ファンとしては「ゆゆうたさんなら何か仕掛けてくれる」って確信できるので。
ゆゆうた氏:
ウケるかコケるか誰も分からないっていうのが正直なところで,それでも全力を出して作ったのは間違いありません。
中尾氏:
ぶっちゃけた話をすると,爆死しても平田さんが損するだけなんで,あんまり気にしなくても……。
平田氏:
出資は僕でゆゆうたさんは一銭も出してないですからね! だから募金とか言えるんですよ!
ゆゆうた氏:
こんな格好して,やりたいことを言うだけ言う。最高に一番オイシイ立場なんですわ(笑)。
こーすけ氏:
平田さんにお金を返すイベントやりましょうよ!
ゆゆうた氏:
あ,それはやらないです。
平田氏:
即答!
こーすけ氏:
平田さんはがんばって売るしかない,ってことが分かったところで中尾さんはいかがでしょう。
中尾氏:
ゆゆうたさんが一生懸命に面白いゲームを考えて,スタッフもがんばって作って,なんだかんだで新しい軸のゲームができました。画面を見ると凄まじくチープですが,実際に遊んでみると意外と面白いので“新しい系統のゲーム”を探している人は,ぜひプレイしていただきたいです。
こーすけ氏:
ありがとうございます。では,最後に平田さんからもコメントをいただければ。
平田氏:
僕からは1つだけ。課金してください。
こーすけ氏:
切実だなぁ(笑)。
平田氏:
真面目な話をすると,弊社はこれまでにもeスポーツのイベントをスポンサードしたり,ゲーム系への投資は長くやってきたりしました。この作品で弊社の主なサービスである不動産に関しても認知が広まれば良いなと思っています。
こーすけ氏:
確かに,ゲーム内にもおたやど要素が出てましたよね。2500万円出したんですから言う権利ありますよ。
平田氏:
ゴリゴリのゲーマーと,実力のある開発会社が組んで作っているゲームですので,ゲーム部分には自信を持っています。まずは手にとってください。お願いします,お願いします!
──2020年7月11日収録。
※画面は開発中のものです。