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印刷2023/09/04 08:00

業界動向

Access Accepted第768回:gamescom 2023つれづれ。〜E3なき「夏の終わり」に感じた,いつもどおりの心地良さ

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 ヨーロッパ最大のゲームイベントとして知られる「gamescom 2023」が8月23日から27日にかけてドイツのケルンにあるKoelnmesseで開催された。今回はイベント全体を振り返りつつ,4年振りとなった現地取材で感じた印象などをお伝えしよう。


雑多な会場の雰囲気に4年ぶりの出会い


開催前日ということもあり,人もまばらなkoelnmesseの正面玄関。駅からやってきたときに,入口直前にあった階段が取り払われてプラットフォーム化し,その周囲のオフィスやホテルも完成しつつあった
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 gamescomは,2009年からドイツのケルンにある大型コンベンションセンターKoelnmesseで毎年8月に開催されている,ヨーロッパ最大のゲームイベントだ。主催者でもあるKoelnmesseの報告によると,新型コロナウイルス感染症が発生する前の2019年は,業界関係者3万1200人を含む37万3000人もの参加者と,1153社の企業が出展するという規模にまで膨らんでいたが,2020年と2021年はデジタルイベントのみの形で開催された。

 2022年はオフラインで開催されたものの,日本は渡航制限が掛けられていたこともあって4Gamerは参加を断念。発表によると,1135社の企業と26万5000人が参加したという。だが,昨年も参加したヨーロッパのゲーム業界関係者によると,2022年は明らかに一般参加が少なく,企業ブースが立ち並ぶスペースにも空きがあったそうだ。
 gamescomに1回目から参加していた筆者にとっては,gamescom 2023は4年ぶりの参加となり,常にオーバープライス気味のミネラルウォーターから小便器の高さまで,いろいろと懐かしかった。

koelnmesseの新兵器? イベント参加登録のQRコードをかざすと,首から下げるパスを瞬間的にプリントしてくれるという,高機能なプリント機能を装備した自動改札に進化していた
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 Koelnmesseによるgamescom 2023の公式発表によると,今年は業界関係者3万1000人を含む32万人の参加者に加え,過去最大となる1227社が出展した。Koelnmesseは “パブリックエリア”と呼ばれるカンファレンスセンター北側と,“ビジネスエリア”や開発者会議が行われる南側に分かれており,その間には来場者の往来によって必ずチョークポイントとなるエスカレーターがある。この場所の混み具合で,おおよその参加者数を体感できるが,筆者が通った際には,2日目の平日だったにもかかわらず,交通量を規制する目的で上りエスカレーターがストップされているなど,以前のgamescomと変わらない雰囲気だった。

 コスプレイベントに公式参加しようがしまいが,自由な服装で来場しているゲーマーたちがいつになく目立った雰囲気だったが,筆者には「NARUTO -ナルト-」「モータルコンバット」あたりを認識するので精一杯だ。今年はセーラー服系のキャラクターに扮した細身の男性たちが目についたのが,現地のトレンドを表していたのかも知れない。

 そんなgamescomに変化が感じられたのは,円安による損得勘定の影響か,はたまた発表のタイミングが変化したためか,これまで多くのファンを集めてきた日本のパブリッシャのブースが減っていたことだ。
 Nintendoのブースも以前よりも小さくなったスペースで,リリース済みのゲームを体験させるという趣向で,gamescomを使って何かのアナウンスをすることはなかった。インディーゲームが集うIndie Arenaをサポートしており,Switchで遊べるインディー系タイトルの出展が多かったようだ。

 今回のイベントで台頭していたのが,Tencent Games/Level InfiniteやNetEase Games,Game Science,miHoYoなどの中国パブリッシャで,そのブースの規模だけでなく会場内に掲げられる巨大ポスターの多くを占拠し,大きなプレゼンスを発揮していた。それでも物販エリアで圧倒的な人気を見せていたのは,日本のキャラクターグッズで,日本IPの強さを感じられた。

注目の高かったGame Scienceの「Black Myth: Wukong」ブース。会場には長蛇の列を作っていた展示スペースがいくつもあったが,ここもその1つだ
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gamescom会場で出展していることをアピールする,というトレンド


 人混みや喧噪をなるべく避けていたため,パブリックエリアのすべてを見回せたわけではないものの,2022年からホール7(Koelnmesseの11ホールのうち,北側に位置するパブリックエリア)が前座イベントであるOpening Night Liveの専用スペースとなっているので,大きなブーススペースを用意するパブリッシャの数は減っており,ブース規模も小さなものに分割されているといった印象だった。

企業展示ブースでは,ストリーマー向けスペースが多かった印象で,コミュニティマネージャーやゲストのインフルエンサーたちが,gamescomの会場から配信するスタイルが目立った
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 その影響か,より多くの来場者に遊んでもらうために,ディスプレイを何十台も並べるような大型ブースも減っていた。来場者の代わりに,インフルエンサーやコミュニティ担当者がライブストリーミングし,来場者とインターネットの先にいる世界中のファンにゲームをアピールする形式を取っているブースが目立った印象だ。

 これは,コロナ禍で編み出された試行錯誤の末の手法なのかも知れないが,そうした一体感を生み出す新しいスタイルがゲームコミュニティに好まれ始めているのだろう。人の少ないブースでも,背後に人々が行き交っているだけでも臨場感はあるだろうからストリーミングの機会としてもピッタリだ。

 そもそも,チケットを購入してgamescomに参加しているゲーマーたちは,限りある時間の中で何時間も並んで1作だけプレイしたり,公開済みのトレイラーを再確認したりするだけでは物足りないはずで,それなら皆が騒いでいるブースに行って,ストリーミング中の対戦やトークを見てゲームの内容を把握したり,ブースのイベントに参加したりするほうが楽しいと考えているのだろう欧米のイベントに再戦する日本のパブリッシャは,こうしたトレンドについて認知しておいたほうが良さそうだ。

ちょっとしたゲーム大会が繰り広げられていたり,観衆を集めるためにギブアウェイ(グッズの放り投げ)を行っていたりする,いつものgamescom。グッズ欲しさに,歓声が聞こえ始めるとその方向に無意識に流れ出す人達が多い
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E3がなくても,やっぱり地球は回る


筆者にとっても4年ぶりとなったケルンだが,過去何枚の写真を撮ったか定かでない大聖堂ももう一度パシャリ
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 かつては「ゲーム業界最重要イベント」であり,アメリカで四半世紀にわたって開催されてきたE3(Electronic Entertainment Expo)の役目が終わったであろうということについては,当連載の「第760回:SGF 2023ポストモーテム 〜 E3なき「ゲームの夏」に感じた涼しさ」でも論じたとおりだ。

 E3の主催者であるESA(Electronic Software Association)は,E3 2024と2025がすでにキャンセルされているというウワサを否定しながらも,実際には「何があってもおかしくはない」と話を濁している。筆者が話しかける国内外のジャーナリストやゲーム関係者に,E3の必要性を訴える人は今のところいない。

 E3の代わりとして機能している「Summer Game Fest」同様に,gamescomでも最大の影響力を示しているのが,ジェフ・キーリー(Geoff Keighley)氏がホストとなるOpening Night Liveだ。今年も「Call of Duty: Modern Warfare III」や「Black Myth: Wukong」の最新トレイラーをはじめ,「Half-Life 2 RTX」や「Alan Wake 2」「Killing Floor 3」「The Fiest Descendent」「Little Nightmare 3」「Delta Force: Hawk Ops」など,多くの気になる作品が正式アナウンスされたのは,記憶に新しいだろう。全チャンネルを合わせて過去最大の2000万ビューを得るなど,大きく注目されたデジタルイベントとなった。

 コロナ禍以前は,E3の「クローズドドア」でメディア向けに発表されたタイトルが,gamescomや東京ゲームショウなどでプレイアブル公開されたり,続報が発表されたりといったように,イベントの使い分けが行われていた。
 今回は,「Alan Wake 2」「Path to Exile 2」などは,Summer Game FestからOpening Night Liveに続いて発表されるなど上手く活用されていたが,まだE3なき後の限定的な発表の場に戸惑っているメーカーも多いだろう。

 また,「Starfield」の正式ローンチを間近に控えたXbox Game Studiosがプレイアブルデモさえ持ってこなかったのは多くの来場者を失望させたかもしれないが,メジャーなサードパーティパブリッシャとタッグを組んでブースを開放し,フロム・ソフトウェアの「ARMORED CORE VI: Fires of Rubicon」や,CD PROJEKT REDの「Cyberpunk 2077: Phantom Liberty」,アトラスの「ペルソナ5 タクティカ」,Starbreeze Studiosの「Pay Day 3」など,25作品もの他社やID@Xbox作品を展開したのは,ユニークな試みだったように感じられる。

 筆者にとってのgamescomの楽しみは,それほど多くのアウトレットを持たないインディー系パブリッシャや開発チームのゲームを見つけることだが,今年は非常に過密なスケジュールを立てたこともあって,自分の足で十分に歩き回ることができなかったのは残念なところだ。

ビジネスエリアで気を吐いていたのがPLAIONブースだ。この中で,何十作もの新作タイトルが紹介されるなど,Embracer Group関連ブースがかなりの区画を占めていた
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 それでも,スウェーデンのRaw Fury,ドイツのKalypso Media,チェコのFulqrum Publishing,イタリアのInteractive,そしてオランダのIceberg Interactiveといった中小デベロッパのタイトルをチェックでき,ポーランドパビリオンでDonkey Crewの新作「Bellwright」や,オーストラリアのCatchweight Studioによる「CONSCRIPT」など,国家パビリオンで知らない新作を見つけることはできた。

 まとめると,gamescom 2023はコロナ禍前とは違った部分もあったが,取材側からすると,それほど変わっていないようにも感じられた。ゲームの発表や発売,その広報や報道を行うスタイルはいつの時代も変化するが,自分のゲーム作りを目指す開発者たちの心意気やチャレンジ精神,イベントに参加するゲーマーたちの好奇心の向かう先は,やはりこうしたイベントに参加して,肌で感じるものなのだろう。そんな人と人とが出会うgamescom 2023に,どこか居心地の良さを感じた筆者だった。

今年の“イベント国家パートナー”はブラジルで,ブラジルの政府関連ゲーム振興団体Abragamesの音頭によって,パビリオンブースには60社が参加して何やら商談を進めていた
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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